たとえ小さな事でも
毎週水曜日は、近くの中学校でスクールカウンセラーの仕事をしています。
前年度からの勤務で、2年目に入ったとたん、目が回るような忙しさです。
週1日9:00~18:00までの8時間勤務が原則なのですが、最近30分の時差出勤で終わるのが7時過ぎることが多いです。
今日は、以前に教育相談を担当していた先生と話し合いが長引いてしまい、学校を出たのが夜8時でした。
昨年度は一日平均で5人の面接をしていて、まだ気持ちに余裕があったのですが、今年度は一日6人~8人と増え、昼休みもわずか20分くらいしかとれず、朝から夕方まで予約でぎっしりの状態で、家に帰ると何もしたくないくらいへとへとになっています。
面接相手は半分が中学生で、残り半分が保護者と学級担任です。相談室に来てもらうだけでなく、あいた時間に職員室で先生方と話すことも多いので、それまで含めると1日に10名以上の人と面接をしている計算になります。
このペースだと、週8時間、年間280時間の勤務は「絶対に」少なすぎます!理想は非常勤でも専任でフルタイムで置いてくれることなんですが…予算があるから文句は言えません。
元教育相談をやっていたA先生と話していて、私は今とても気になっている生徒さんがいるんだけど、と思い切って今日のお昼にあったできごとを話しました。私がその生徒さんの名前を言うと「実は私も会って最初の日に名前を覚えた子で、非常に気になっているんですよ」とA先生も同意してくれました。あ、やっぱり気付く人は気付いているんだなあ、と安心して何が気になっているのかを話すと、A先生は神妙な顔で、「確かに普通でない、という感覚が自分の中にもあった気がしますね」とうなずいておられました。
その子は1年生で、ちょっとしたことがきっかけで知り合いました。とても明るくて人なつっこい子で、目立つ感じは全くありません。しかし、私が「おやっ」と思ったのは…その子の身長が中学1年生にしてはかなり低かったのです。もちろん低い子は他にもいますが、標準の範囲内から考えても明らかに身体的な発達の遅れがあるように見えたのです。しかも精神的な発達も明らかに遅れているようでした。私はこの程度の遅れなら、早急に医学的な治療が必要だと直感しました。
でも、今日私が話すまで、他の先生方の口からも、小学校の元担任からも、発達の遅れについて話題が出ることが全くなかったのです。学習面での遅れというとらえ方はなされていたようですが…身体面は見逃されていたようです。私はA先生に率直に尋ねました。「本当に今まで誰も気がつかなかったんでしょうか。そのことが私にはちょっと信じられないんですが」
A先生はちょっと困った顔をして、「それは何とも言えませんが…私が見た限りでは他の子と何か違う、放っておけない気がしたので…」
気付いたのは学級担任ではないので、これからまず学級担任に理解を求めるため働きかけなければなりません。そして保護者へ連絡していただくことになるのですが、そこまで行き着くかどうかも分かりません。でも、このまま放っておく訳にはいかないので、できる限りはやるしかないのです。なぜなら、学習の遅れはこの子の問題の一部でしかなく、単に低身長というだけでなく、全体的に発達が著しく遅れているのです。
このような問題の場合、誰かが気付かない限り、いつも子どもと生活を共にする保護者にとって、子どもの成長の早さが少し違っていることになかなか気付けないものです。専門的な知識は必ずしも必要という訳ではなく、どんな小さなことでも「いつもと何かが違う」と感じることのできる感性と、専門機関へ相談できるようなつながりをつくれるかどうかが、早期発見には必要不可欠であり、そういう感性のある現場の先生方やスクールカウンセラーがもっと増えることを強く願っています。
A先生が、「私は結構うるさがられる存在で、細かいとよく言われるんですが、こんなでもいいんですかね」と話すので、先生のような人がいないと、もっといろんな問題が見過ごされていたはずで、今のままで十分じゃないですか、と答えると、少しほっとした表情に変わり、なごやかなうちに話し合いは無事終わったのでした。
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