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花が教えてくれる、大切なこと

 2日経って、やっと考えがまとまりました。
次に控えている記事もあるので、先をすすめます。 

 チューリップの例えは、初めは5,6歳くらいの年齢の子どもに認知の働きを分かりやすく教えるために考案したものです。発達上、自分と他人の気持ちや立場が本当に理解できるようになるのは9歳前後ですが、小学校に上がる少し前くらいから、未熟ながらも自他の区別がつくようになり、自分の気持ちを言葉で表現する能力が発達していくので、分かりやすい説明ができれば、自分の気持ちがどういう風に働くのかを少しは理解することができるのです。

 しかし実際には、親子関係に問題を抱える大人にこのたとえ話を使っています。主に1歳~3歳くらいの子どもを持つお母さん向けに、です。

 乳幼児健診の子育て相談にかり出されるようになって、「ご飯を食べない(激しい偏食がある)」「一時もじっとしていない」「夜眠ってくれない」…といった、子育ての様々な悩みを聞いています。もちろん、その中には確かに多動や自閉傾向が疑われる子どもも、40人に1人くらいの割合で見つかりますが、発達上の問題というよりは、お母さんの受け止め方に多少問題がありそうだなというケースがほとんどです。

 一言で言うと、ゆとりがない人が多いなと感じます。例えば言葉の発達が遅れている、と相談に来られたお母さんに、普段家で子どもとどういう過ごし方をしているのかと尋ねると、子どもの好きなビデオを何度も繰り返し見せています、と答えます。そこで、「ビデオを見せている時、お母さんは何をしていますか」と聞くと、「ビデオを見ている間はじっとおとなしくしてくれているので、その間に家のことをします」

 子どもと一緒に遊んだり出かけないのですか?と尋ねると、「子どもとどう遊んでいいのか分かりません」…それでは、と「子どもに話しかける時間は、一日の中でどのくらいありますか?」と尋ねると、「さあ、あまり話していませんね」

 子どもの事をどうしてもかわいいと思えない、という相談も、何度か受けました。「子どもが泣くと、イライラしてたたいてしまうんです」、とあるお母さんが私に話すので、「イライラしないようにするには、何が必要だと思いますか?」と尋ねると、「子どもが機嫌が良ければ、別にイライラしません」

 いや…そうじゃなくて、”泣いてもイライラしないようにするにはどうすればいいですか”、と言いたかったんですが、と話すと、お母さんは「とにかく子どもを泣かさないようにすればイライラしないですよね」

 最初の例は、子どもに十分な言葉かけを普段からしていないにもかかわらず、子どもの言葉が遅れているのは何か子どもに問題があるのではないか、と相談にきたお母さんの言い分ですが、それはちょうど、必要な養分をあまり与えていないのに、チューリップがうまく育たない、咲き具合がいまいちだと言っているようなものです。

 次の例は、子どもさえ泣かなければイライラしない、と思っているお母さんのことですが、子どもは理由があって泣いているのであって、何で泣いているのかをあまり考えずに泣くこと自体を非常にストレスと感じているととらえることができるでしょう。

 それはちょうど、チューリップの色や形など、何か気にいらないところがあってイライラしているのに、それはチューリップに問題があるからだと言っているようなものです。
 
 こういう例に限らず、実に多くの人が、自分以外のものを、自分の都合のいいように動かそうとしているように感じます。それはちょうど、チューリップに、「自分が咲いて欲しいときに、自分が望むように咲いてくれ」と言っているようなものです。 

 チューリップは時期が来ないと咲きませんし、チューリップとしてしか咲きません。私たちにできるのはせいぜい、ちょっと咲く時期をずらすとか、大きめの花を咲かせるとか、色のバリエーションを増やすことくらいです。もし期待するような結果が出なくても、それはチューリップのせいではありません。仮にチューリップのせいにした所で、何も得るものはありません。

 チューリップにも、個体差があります。同じプランターに同時に植えても、花が咲く時期は少しずつ違いますし、背丈も、花の色も、微妙に違います。しかし、その違いはとても些細なことでしかなく、花が咲いてくれればそれで十分だと思えれば、違いは全く問題にはなりません。

 ところが、実に多くの人がこの些細な違いにこだわり、まるで大きな問題のように捉えてしまっています。全体としては順調に成長しているのに、満足できない人が多いように思います。これもチューリップ(子ども)のせいではありません。時期が来るとちゃんとできるようになるのですが、そこまで待てないのでしょう。

 
 最後に、もう一つ別の見方をしてみましょう。

 前回も少し触れたように、チューリップが「私はチューリップでいるのはイヤだから、バラになりたい」と言うでしょうか。チューリップはチューリップとしてしか生きることはできませんし、受けた自然の恵みを享受しつつ、ただ静かに咲いているだけです。チューリップが他人に好かれたいとバラになろうとすることはできません。バラにならなければ愛されないということもありません。チューリップのままでも、この花を愛する人はたくさんいます。

 しかし多くの人が、自分以外のものになりたいと望み、自分ですら都合の良いように変えられないかと考えているように思います。どんなに他人に気に入られようとして自分以外のものになろうとしても、結局は自分自身としてしか生きることはできないのです。せめて私たちにできることは、精一杯生きることだけです。その姿を見て、愛情を感じる人がかならずいるはずです。自分を誰かの好みに変えようとするよりも自分の良いところを生かす方が、より豊かな人生を送れるのではないかと思います。


 

 
  

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Comments

はじめまして。幼少期をのトラウマを抱えながら子育て中の主婦です。

チューリップはチューリップのままでいい・・つまり、ありのままの、そのままの自分でいいということですよね。でも どうしても 自分の良いところがみつかりません。また、そのままの自分っていうのは、どういう自分なのだろうかと 一生懸命考えてみているところです。

私は、トラウマによる鬱や不安神経症といった心身の症状をもっています。そのため、家族に迷惑をかけている。そんな 自分でも良いのでしょうか?ずっとこまま治らなかったら。。とか 色々不安も浮かんだりもします。

すみません、このようなコメントで・・
そのままの自分って、どんな自分なのかわからなくなっているところでしたもので・・

Posted by: はづき | 2005.08.24 at 01:50 PM

そういえば現在自閉症と診断されていますが、そんな息子に私はたくさん話しかけをしたかといえばしていなかったような気がします。
実際今はよく話しているのを考えると反省したりします。

でもそんないろいろ障害のある息子ですが、障害のわかってからの方がずっと本人を認めて愛してあげているような気がします。

チューリップのままでいいとおもえるからかもしれません。バラのようにしなくていいのかと思ったらチューリップがとてもいとおしく思えました。

ちょっとわかりづらい文章だったらごめんなさいね。

Posted by: loveangel | 2005.08.24 at 04:01 PM

おひさしぶりです。
とても大切なことを教えていただきました。
いつもありがとうございます。
Sanaさんもどうぞご自愛くださいね。

Posted by: Botan | 2005.08.24 at 09:15 PM

こんにちわ。アスペルガー症候群について探していたら、しばらく前ここにたどり着きました。Sanaさんの書かれていることは自分にぐっさりきますが、読んでると癒されるというか、なんだかほっとするような感覚がします。

あまり無理しないでくださいね。これからも楽しみにしてます。では

Posted by: mio | 2005.08.24 at 10:38 PM

おはようございます。
とても解りやすいお話で、はっとさせられました。アスペの息子を少しでも普通にしようと悪戦苦闘していたような気がします。それより、アスペの特性を認めて伸ばすことのほうが、うんと楽でよいことだと、今更ながら感じました。
気持ちが少しほぐれました。ありがとうございます。

Posted by: マーキー | 2005.08.25 at 07:57 AM

 三つ子の魂百までとよく言います。私の幼少期から児童期にかけて受けたトラウマは、解消されません。
 どんな楽しいことがあっても心のどこかに希死念慮がひそかに忍んでいます。
 私の家のアルバムには家族の写真やビデオがありますが、自分が写っているものは1枚しかありません。
 自分に自信をもっていることもあります。しかし、世の中の平均レベルからすると自己肯定感はかなり低いと認識しています。

Posted by: aikidonotatujin | 2005.08.25 at 09:01 PM

こんにちは☆
記事を読みながら、とても穏やかな気持ちになりました。
個性を認める・長所を伸ばす…、大事なことなのに、ついつい忘れがちなことでもあります。
Sanaさんの記事を読んで、改めて、意識して頑張っていこうと思うことができました。
ありがとうございます!
日々の忙しさにかまけて、こういう気持ちを忘れないように、これからも過ごしていきたいと思います(^_^)

Posted by: moon_babe86 | 2005.08.26 at 06:11 AM

>コメントを下さったみなさま、

 本当にありがとうございます。
一つ一つのコメントを何度も読ませて頂きました。

 いろいろ考えて、今回はお一人お一人に御返事をしないことにしましたが、皆さんのメッセージはちゃんと受け取りました。この記事が、皆さんにとって何かお役に立てることをとてもうれしく思っています。

Posted by: Sana | 2005.08.28 at 01:23 PM

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Posted by: buy generic viagra | 2007.08.17 at 06:26 PM

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