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ほんもののわたし

 今月末の中学校での研修会のために、全部で6冊本を買い込みました。そのうちの一冊が、

 「あなたがあなたであるために」 ローナ・ウイング監修・吉田友子著 中央法規 1200円

 いい本だったらちょっと読んでみようかという軽い気持ちで買った本でした。当事者を対象に、アスペルガー症候群の基本的な特徴や日常生活で工夫できることが非常に易しい言葉で書いてあり、子どもや成人へ障害について説明をするときに役に立ちそうな内容です。

 その中に、こういう言葉が書いてあるんです。

 ただ忘れないで下さい。「特別な工夫」が必要なのはあなたが間違っているからではありません。ASらしい感じ方や行動パターンだって正しいのです。たまたまこの地球では少数派だというだけなのです。
 あなたは何かのにせものではないし、間違った何かでもない。多数派と同じように感じる人になろうと考える必要なんてないのです。

 読んだ瞬間に、何だか胸が熱くなってきて、ぽろぽろと涙が出てきました。

 私がずっと胸の内にしまってきたことって、たぶんこれだったんだろうなあ、と。

 数日前、九州自動車道を車で走行中、偶然目の前に1970年代のスカイラインを発見。じっと見て、あー懐かしいな、と思った瞬間、はっと思い出したことがありました。

 小学4年の頃、私は車のボディーに刻まれている、SunnyとかSkylineという文字だけに非常に興味を持っていて、通学路の途中を走る車や駐車してある車を一つ一つのぞいて文字を確認する(ついでに口にも出していた)ので、いつも一緒に帰る友達のグループからヘンなヤツだと言われたことがあったのです。

 一つ思い出すと、次々と「そう言えば…」とイモヅルのようにどんどんと記憶が出てくるものです。

 聴力検査で「聞こえが良すぎる」と言われたこと、血圧や体温の調節がうまくいかなくて朝礼でいつもふらふらになりながら根性で立っていたこと、雷が極端に怖かったこと、女の子同志の会話に入れなくて孤立した時期があったこと、辞書や百科事典、機械の仕組みなどへの興味が強かったこと、小さい頃から気がつくと空想の世界に入り込み、いろんなことをぼーっと想像して過ごしていたこと…。

 今の時代なら、小学校時代の私のような子どもは間違いなくアスペルガーと言われているでしょう。でも今から30年以上前に、そんなことを知るよしもありませんでしたし、相談するところもありませんでした。

 それでも今思い返せば、小学校の5,6年の時にはすでに、私の考え方や関心のツボが何だか他の人たちと違うことにしっかり気付いていたようなのです。そしてみんなと同じようにならなければならない、と思ったのでしょう。私の日常生活とは、「自分以外の誰かになろうとする」毎日だったのかもしれません。

 日常で数限りない対人関係の小さな誤解や失敗を繰り返していくうちに、「私は自分の思ったことや考えをそのまま出さないで、周りのやり方に合わせるようにすれば、問題を起こさずにすむ」と学習したのです。こういう話題なら相手が喜ぶと分かれば、相手に合わせて話す。自分とは感じ方が違っていても、相手と同じ感じ方をしている演技をする、という風に。

 自分の中には「そうじゃないよ」という気持ちがあったにもかかわらず…。

 そこそこに他人との関係を保つために、私の生活は「言ってはいけないこと、してはいけないこと」のルールでいっぱいでした。ルールに従って行動すれば、それほど頻繁に相手を怒らせるということはありませんでしたが、その反面自分がどんどん嫌いになっていきました。

 私はずっと「自分はできそこないの不良品」だと思っていて、なぜそう思うのか、自分でもうまく説明することができませんでした。でもこの思いは、自分らしく生きたいと願いつつも、どこかでそれを禁じてきた毎日の葛藤の積み重ねがもたらしたものだったのではないかと今は思います。なるほど、心底楽しいという気持ちも、自分の人生を生きているという実感も持てませんでしたから。他人の反応に合わせる自分を、カメレオンのようだとも感じていました。

 この「にせものでもないし、間違いでもない」という言葉を見た瞬間、自分を受け入れるとは、本当はとうの昔に気付いていた、ちょっと感性が人と違っている、ほんものの私を認めてあげることなんだと分かり、こころのなかにずっと残っていた氷の塊のようなものが、さーっと解けていくのを感じました。他の大勢の人と同じ感じ方でなければならないということはない、この言葉をもっと早く知っていたら、と思います。

 この本を読み終わった後、自分が今の仕事でもずいぶんと無理して人に合わせようとしているな、というのが見えてきて、他のスタッフと全然意見や感じ方が違っても、それは他人の視点を学ぶ経験になると受け止めればいいだけの話しで、自分が無理してまで賛同しようとするから、余計に疲れているんだな、と納得。

 角が立たない程度にセーブしながら、「ありのままの自分でいられる時間と空間」をどう作っていくのか、これからしばらく私の課題です。

 

 

 

 

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Comments

 特殊の教員やってます。以前メールをお送りしました。
 アスペルガータイプの大人は、脳が疲れていると思います。
 「明るい挨拶をしましょう」どうしてもそういう気になれない。何で朝から、そう気が入るの??
 私も立ちくらみ、いつもでした。治ったのは最近。脳内の血流にもアスペは無関係あるのかも。
 

Posted by: aikidonotatujin | 2005.07.08 at 10:06 PM

配偶者の「家族」の定義より
 気持ちの交流や会話といったコミュニケーションを楽しむことは、彼にはどうやら難しいようです。そして家族との交わりの中身はそれほど彼には関心がなく、「家族」と認めたメンバーが彼と同じ時間と空間に存在することで安心感を得ているような気がします。ぴょろと私が目の前にいることで満足しているんだろうなあ、と分かると、あのマイペースな行動ぶりや、来て早々「あれやって、これやって」とお願い事をごくごく当たり前のようにするのもよく理解できるのです。
配偶者にとっては、「家族」とは彼の決めた「親しい」領域に存在する人間の集まりで、彼のルーチンを乱さない限りは安全な存在なのでしょう。

 まあ、それはそれでいいんだけど…ちょっと寂しいかな。

 何か自分のことを言われているようで。一生懸命によい父親になろうとしたのですが、子どもとのコミュニケーションがなぜかだんだんとれなくなっていってしまいました。
 自然な子離れとは、ちょっと違う気がします。自分でもよく分かりません。

Posted by: aikidonotatujin | 2005.07.09 at 09:35 PM

>aikidonotatujinさん、

 アスペの脳は、普通よりエネルギーを使う分、確かに疲れやすいかもしれませんね。だから時freezeするのかも…。

 子どもが大きくなるほど、関わり方が難しくなることもあるのですね。コミュニケーションの方法が段々複雑になってくるのも一つの理由かもしれません。

Posted by: Sana | 2005.07.09 at 11:20 PM

私も本を読みました。春に吉田友子先生のまる一日講演会があってそのときとても感動したので。自分の子供のころのことを振り返っているところです。
みんなと違うことが苦しかったけどこれからは、そういう部分を楽しめたらいいかな。わたしには聴覚過敏があります。たぶん
また お便りします

Posted by: おかぴ | 2005.07.11 at 01:36 PM

>おかびさん、

 はじめまして。書き込みをありがとうございました。
私も「そういう部分を楽しめたらいい」と思います。吉田先生の本を読むと、そういう気持ちになれますよね。

Posted by: Sana | 2005.07.12 at 09:47 PM

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Posted by: stair parts glossary | 2015.02.06 at 12:32 PM

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