昨日(金曜日)は朝早くから大学の研究授業をやって、それから姫路へ仕事に行ってきました。自分でもよく体力持ってるなと思います。
今月中に、学会のレジュメ(パワポ)2本と翻訳と、それから心理検査の所見が2人分…うーん、どうやってかたづけようか…。
私は一つのことにとりかかるまでに時間がかかります。いつもぎりぎりにならないとやらないので皆さんには迷惑をかけてます。分かっているのですが、なかなか直りません。先日「実行機能障害」の講演会を聞いたときに、まさに自分のこと言われてる…と苦笑いしたのはいうまでもありません。
ぴょろは来週水・木と期末テストなのですが、なかなか勉強が進まないようで、今日これから塾で補習授業があります。彼もぎりぎりにならないと机に向かいません。私自身も全く同じところでつまづいているので、あまりぴょろに強く言えないのが辛いところです。
来週は週末まで更新ができないかもしれません。時間のある今、続きを書いておきましょう。
私は今年度、K市内の2つの中学校でスクールカウンセラーをしています。福岡県(注:政令指定都市はシステムが別)ではスクールカウンセラーは中学校の校区内にある小学校についても必要に応じて支援をすることになっています。
ここ1ヶ月と少しの間に、「生徒が病院でアスペルガー症候群だろうと言われたのですが…」とある小学校から何人か相談に訪れていて、保護者や学校の先生との面談が続いています。また中学校では、この2ヶ月間でアスペルガーやLDなどの発達障害の可能性がある子どもたちや保護者との面接を集中的にやっていて、そのうちの数人を大学病院へ紹介する手続きをとりました。
大学病院の小児科には数名の専門医がいますが、それでも初診だと最低2ヶ月、ドクターによっては半年以上待たなければなりません。今紹介しても、診察→診断までにはかなり時間がかかるのです。それでもどうしても必要だと思うから紹介します。彼らが目の前に迫った進路の問題や、二次障害を抱えているからです。二次障害の程度が重ければ、小児科ではなく精神科へ紹介することもあります。
さて、アスペルガー症候群と診断される時期は、人によって様々です。
言葉の著しい遅れがあり自閉症(カナータイプ)と診断された子供が、後に言語の急激な発達を見せ5,6歳くらいでアスペルガー症候群に診断が変更されることもあるようですが、例としては決して多くありません。
アスペルガー症候群は、大半が小学校就学後から成人後のどこかの時期で見つかります。海外では比較的早く、診断が確定する平均の年齢が8歳だということなのですが、日本はもう少し遅いかなと思います。中には小学校入学後問題行動が非常に目立つ形で、早い時期に周囲が気付くこともあるのですが、大抵は小学校高学年以降、友達との関係のこじれや不登校などのできごとがきっかけとなって見つかります。この傾向は中学3年生くらいまで続きます。
早い時期に見つけ、早期に対応するにはまず周囲が気付かなければなりません。アスペルガー症候群についてよく理解している教師や専門家が近くにいることが理想ですが、少なくとも子どもたちの行動の特性をよく観察し理解することのできる大人がいて、ちょっとこの子は違っているな、と気付き、その子どもたちを専門機関へ紹介する仲立ちをする人がいることが必要です。
高校・大学(あるいは専門学校)の時期は、二次障害がない限りは発見されることは少ないです。それまでに本人の行動や周囲との関係でいろいろと問題が起こっているのに、周囲が十分に気付かず対応がなされかった場合、この時期にうつや不安障害など精神的な問題が出てくることが多いです。しかし、ここでもう一つの問題が出てきます。二次障害が現れると、そちらの診断が主になり、逆にアスペルガー症候群が見つかりにくくなることがあるのです。
この時期に適切にアスペルガー症候群かどうかを診断するためには、前面に出てきた精神的な問題の背後にアスペルガー症候群の存在を見つけることのできる専門医や心理士の存在が不可欠です。
小学校・中学校で特に目立った問題もなくどうにか集団生活を切り抜けられた子どもたちの中には、大学まで引き続きそのままの状態を維持していることがあります。特に小規模校で環境の変化が少ないと、わりとうまくやっていけるのです。大学は周囲の干渉が少なく、またこつこつとまじめに講義に出席し課題もきちんとこなせば先生の評価は高くなり、いい意味で注目してもらえます。また自分の好きなことに関われる時間も増えるので、アスペルガーの人たちにとってはやりやすい環境なのではないかと思います。
これは余談なのですが、私が教えている心理学の授業の受講生に、間違いなくアスペルガーだと思う学生さんがひとりいます。この授業は社会福祉士をめざす人も受講しているので、時々実践的なケースワークをやるのですが、ある時に課題で出したケースがいい悪いがはっきりしていない、選択の難しいストーリーで、登場人物の心情を想像する力が必要なものだったので、彼はどうしても答えることができませんでした。このときは提出するかしないかだけの評価なので、特に問題はありませんでしたが、前期試験の問題の一つが毎年必ず論述式なので、出題や評価をどうしたらいいのか、今悩んでいるのです。
アスペルガーの人が一番大変なのは、社会人になるときです。大人になって発見される場合は2つあり、一つは二次障害の治療中に、もうひとつは、結婚し子供が生まれてその子供に発達障害が見つかった時の「ついで診断」です。
大学卒業まで、特に周囲も気付かず目立った問題もなくやってこれた人たちが、社会人となり人間関係が今以上に複雑になり、いろいろな役割を求められるようになってうまく対処できなくなり、その結果精神的な問題が出てくるということが少なくありません。がんばりやさんであればあるほど、その傾向が強いです。
精神的な問題としては、パニック障害、強迫性障害などの不安障害や、うつなどの気分障害がとても多いです。しかし中には、統合失調症と誤診されていたり、不安を取り除くためにアルコールを多用し、アルコール依存症と診断されることもしばしばあります。
今までの病院臨床の経験からは、大人になってからアスペルガー症候群を見つけるのは子供以上に難しいと実感しています。特に二次障害からの診断は極めて難しいです。「ついで診断」で小児科の専門医に相談する方が、むしろよく理解してもらえると思います。
大人の二次障害からの発見は、医師へ専門知識や経験を求めることももちろんですが、心理職やPSWなどの専門援助職がアスペルガー症候群の知識と臨床経験を持っておくことがどうしても必要です。中には自分ではアスペルガーではないかと気付いて病院に行ったら、そこのドクターに否定され、別の病院で相談して始めて正式に診断されたという例もあります。
アスペルガー症候群は早期に発見されるとは限りません。そして早期に発見されたからといって、それでその後うまくいくとは限りません。「見つかるべきときに見つかった」と思うしかないこともよくあります。しかし個人的には、願わくば小学校卒業までには発見される方が、その後の成長を考えればなおさらのこと望ましいのではないかと思っています。
そのためには、中学校に配置されているスクールカウンセラーと小学校の先生との連携を強めることと、学校によってはスクールカウンセラーを配置できるようにすることが早急に望まれます。
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