« ADHD、アスペルガー、そしてPTSD | Main | The most difficult cases(最も難しい人たち) »

軽度発達障害支援が目指すもの

 S先生とのお話の続きを書こうとしていたら、急にカウンセリングに行っている中学校から電話があり、ある先生と時間を作って話し合いをすることになりました。

 電話をかけてきたのはI先生で、担任のY先生が困っているようなので、相談に乗って欲しい、という内容でした。

 学校で2時間ほど話したあと、今度は保護者から急遽相談したいという連絡があり、それからまた1時間面接をしてから、学校を後にしました。予定外の勤務で、その上スクールカウンセラーの勤務時間は年間280時間と決まっているので、全くの無報酬です。でも必要であれば、いつでも学校に顔を出すようにしています。

 それほど数は多くありませんが、やはり軽度の発達障害を持つ可能性がある子どもたちは1学年に数名ずついて、そのうち何人かは長期の不登校状態にあり、なかなか連絡もとれない状況です。また、登校は問題なくできていても、クラスの人間関係でトラブルが起きたり、学習面での支援が必要だったりと、1人1人が抱える問題も、彼らをとりまく環境も全然違います。時間をかけて丁寧に対応しようと思ったら、週1日8時間の勤務ではとうてい足りないのです。

 ADHD、LD、PDD(広汎性発達障害)、自閉症スペクトラム障害…と軽度発達障害といっても様々ですし、前回触れたように、これらの特徴を少しずつ持っている人たちも多いので、結局支援の理想は個々の状況に合わせたテーラーメードなもの、ということになるのでしょう。

 しかし、発達障害支援法が制定され、発達障害支援センターが少しずつ整備されても、それでも支援の手が届かない子どもたちが出てくることは容易に想像でき、そういう子どもたちをどうするかという問題は最後まで残るだろうと思っています。

 学校で仕事をする上で、今一番心が痛むのは、保護者への対応が中途半端になってしまっていることです。担任の先生と相談し、やはり保護者に一度お会いした方がいいだろうと判断した場合、担任の先生を通じて保護者に都合のよい日時に学校へ来て頂くように連絡をするのですが、仕事などの事情で学校へは来られないとお断りされることもあるし、来られて話を聞けても時間的に限られているので、子供の家庭での様子を伺い、さらに保護者が不安に思っていることを聞くだけで精一杯なのです。

 そうして、一応相手の話を聞いた上で発達障害の事を説明し、可能性として否定できないので、一度専門医の診察を受けるように勧めてはみるのですが…勧めに応じて診察を受けに行ったのは昨年はわずか1人だけでした。

 欠席が年間3分の1以上の長期不登校の子供たちについては、保護者とできるだけお会いできるようにと働きかけてみるのですが、家庭訪問すらお断りされる場合が多いです。そこで、せめて外部の相談窓口(青少年センターや適用指導教室、精神保健福祉センターなど)につなぐ手段もあれこれと試してみましたが、反応は鈍く結局保護者が動かなければ何も始まらないという状況が続いています。

 このように、軽度発達障害について保護者の理解や協力が得られないと、子どもたちはそのままの状態で中学を卒業していきます。高等学校では何とか適応できる子供と、進学後も引き続き不登校を続ける子供と、それぞれ状況により分かれていきますが、もともと抱える行きにくさの問題はそのまま持ち越されて大人になっていき、年齢が上がれば上がるほど支援が手薄になり、本当に必要な時に必要な援助が受けられなくなっているのが現状ではないかと思います。そしてうつなどの気分障害が出てきたり、問題が複雑化したあとにようやく発達障害の存在が明らかになることの多い今の状況では、発達障害以外の様々な問題への総合的な介入が必要となるため、単なる発達障害支援という枠組みではとうてい抱えきれなくなる可能性が高いです。

 ADHDの当事者としての個人的な意見ですが、障害があっても社会と何とかうまくやっていく道を探すことが支援の目的になれないかもしれないと思います。私がどんなに注意してもがんばってみても、結局不自由さも問題もなくなることはなく、結局社会への適応も十分にはできているわけではないのです。残念ではありますが、やはり発達障害があるということが受け入れられない場合が少なくないわけで、障害をいいわけとしか受け止められていないと感じてしまうような事も日常的に起こっているのです。

 だから支援する立場でなく、当事者としての立場から言うなら、支援とは結局は、それぞれ障害の程度も問題の中身も異なる人たちが、少しは安心し落ち着いていられる居場所を見つけられるように、そしていろいろあってもそれでも少しは自分を好きでいられて、ささやかでも日常生活で何らかの役割を持てるように助けることなのではないかと思っています。

 生活習慣病などもそうですが、基本的に発達障害の支援とは、早期発見、早期介入が理想です。乳幼児健診や育児相談などを充実させ、スクリーニング機能を強化することももちろん必要でしょう。しかし発見されても、そこから保護者が子供の障害を受け入れるまでには長い道のりがあり、さらに発達段階に応じた支援となると、日常生活機能、学習、そして職業支援と実に広範囲で、多業種の連携なしでは達成できるものではありません。

 発達障害が軽度であれば当然発見は遅れるし、発見できても周囲の理解や協力が得られないなら、当然支援の手が届くのはかなり遅くなって(あるいは全く届かないままになって)しまうかもしれません。法制度の谷間に追いやられる人たちが当然出てくるでしょう。軽度の発達障害を持つ子どもたちは2度の大きな壁にぶつかると私は常に感じています。その一つが思春期であり、もう一つが成人前期、つまり学校を卒業し、就職を迎える時です。前者はどうにか乗り越えられる人は多いですが、後者をどうしても乗り越えられず行き場のない人たちはたくさんいます。

 法律自体は簡潔なものになっても、その行間には「やるべきこと」が山のようにあると思います。成人した発達障害の当事者の受け皿作りもその一つではないかと思います。

 成人の支援については、別枠で書きたいと思います。

 

|

« ADHD、アスペルガー、そしてPTSD | Main | The most difficult cases(最も難しい人たち) »

Comments

はじめまして。高機能広汎性発達障害と診断されています、rain と申します。
ブログ記事、大変興味深く読ませていただいています。
突然で大変申し訳ないのですが、Sana さんのブログ、リンクさせていただいてもよろしいでしょうか?

Posted by: rain | 2005.02.27 at 01:00 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/10227/3079130

Listed below are links to weblogs that reference 軽度発達障害支援が目指すもの:

« ADHD、アスペルガー、そしてPTSD | Main | The most difficult cases(最も難しい人たち) »