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パートナー

 明日、年明けの最初の授業を、大学と専門学校で教えます。
専門学校の方は、発達心理学がテーマで、昨年末は、子育てと出生率の問題について、ビデオを見ながらみんなに考えてもらいました。

 今回はその続きで、夫婦の問題と自殺のことを取り上げる予定にしています。(中年期の心理、ということで)

 話のネタになれば、と年末年始、TV番組や週刊誌など、普段見ないものにまで目を通していると、中年の「不倫願望」とか「熟年離婚」といったテーマがやっぱり目につきました。確かにセンセーショナルな、野次馬っぽいものもありましたが、中には結構まじめで、的を得た意見もちらほらとありました。ひとの生き方に関わる問題として取り上げているものは、私も十分共感できました。

 中年とは、ひとことで言うと、「ふりかえりの時期」であり、こころもからだも、大きな変化(クライシス)を体験する時期でもあるようです。

 そして、今まで蓄積したいろんな問題が、目に見える形で出やすい時期とも言えます。20代、30代の未解決の課題が、40代以降に違った形で出てくるとも言われます。しかし逆に、人間としては大きく成長するチャンスも多いし、若いときからの努力が、何らかの形で実り始める時期でもあるので、必ずしも良くないことばかりではないのです。

 中年期は、子供が次第に成長し、親の手を離れる時期でもあり、親が年を取り、手助けが必要になってくる時期でもあり、家族機能も大きく変化します。中でも、夫婦の関係が最も揺さぶられる時期と言っても過言ではないと思います。

 この時期をどう乗り越えるか、身体的・心理的・環境的な変化に適応できるかどうかが、よい老年期を迎えられるかどうかのカギだと思います。

 私が留学中に、「どうして日本人はすぐに離婚しないのか」と聞かれたことがありました。向こうでは、パートナー同士うまくやっていけないということになると、あっさり離婚してしまうことが多いので、うまくいかないと分かっているのに何年も我慢して一緒にいるのはどうしてなのか理解が難しいというのです(しかも結局は離婚するでしょ?とは相手の言い分)。子育てについての責任感とか、経済的な問題とか、いろいろと理由を説明はしましたが、自分でもなぜ?と言われるとよく分からないところがありました。

 最近、男女の役割とか、子育て問題などを含めて、パートナーとの関係がうまくいかなくなってもすぐに離婚にならないのは何故なのか改めて考えてみました。

 (ここからは、あくまでも仮説であり、私の主観も多少含まれているということを念頭に置いて、お読み下さい。)

 

 結婚したばかりの時は、夫婦という単位しかないので、そこには基本的には男女の役割が存在します。しかし、子どもが産まれると親としての役割が新たに加わります。そして子供が独立して親としての役割が一段落する(でもゼロにはならないけど)と、夫婦という単位が最後に残るわけです。(ここまでは理論的なお話です)

 夫婦の関係と、親子関係、この核家族における主な人間関係の中で、親子関係があまり密になりすぎると夫婦の関係が疎遠になってしまうことがあります。子供を育てることが第一といえば第一ですが、親としての役割にあまり重点を置きすぎると、男女の役割がうまくとれなくなってしまうのです。女性であれば母親であることと、女性であること、男性であれば父親であることと男性であることのバランスが崩れると、最も影響を受けるのが夫婦の関係です。
社会的には、女性が母親であることを求めすぎている所があると思うし、男性に対しては逆に、父親の役割があまりちゃんと評価されていないのではないかと感じることがあります。それが家庭の中でも同じように起これば、当然ながらひずみが出てくる、そのひずみがどかんと出てきやすいのが、中年期なのではないかと思います。

 そうならないためには、子育てをしながらでも夫婦2人だけで過ごす時間を作るように努力するとか、夫が父親として接する時間をもう少し増やし、その間に妻が1人で過ごせる時間を作るとか、そういう小さな努力を積み重ねていくしかないのかもしれません。でも、それをやらないまま、ただ何となく子育てを母親任せにしているうちに、段々と夫婦としての関係に隙間が入り、不満がたまっていく。

 いろいろあっても夫婦関係を上手くやっていける人は、この2つの役割を上手にこなしている人ではないかと思います。少々厳しい言葉ですが、仕事がいくら忙しくても、父親でいることはできますし、いくら子育てに時間を取られていても、女性である自分を大切にすることはできます。

 役割に偏りが生じ、夫婦関係のバランスが崩れても、気付いた時にいつでもやり直すことは可能です。しかし、やり直しが難しい場合ですぐに離婚にならないのは、子供がいるから、経済的に自立が難しいから、という理由だけではないのではないかと思います。というのは、子供がいなくても、子供が巣立った後でも、経済的に自立できる状況にあってもそれでも離婚に踏み切らないケースも多いからです。

 日本人に特有な現象なのか、あるいは他の文化にも同じようなことが起こりえるのかはっきりとは分かりませんが、私の目から見て、夫婦の関係がまるで親子関係のようになってしまっているように見えることがあるのです。

 男性は、もともと、この人とは合わないと感じると、すぱっと関係を切ってしまうところがあります。

 ところが、夫婦の間で、うまくいかなくなると、夫がパートナーを女性としてではなく、母親のポジションに置くことで関係を維持しようとすることがあるように思えるのです。つまり、パートナーという対等な関係から、「許し受け入れる存在」に置き換えることで、安心を得ようとしているのではないかと思えるようなケースにこれまで何度もであったことがあるのです。父親としての役割を負うよりは、子供の立場になってしまっているようにも思えます。

 そして女性にとって、夫がもはやパートナーではなくなり、もう1人子供が増えたような状態になってしまっても、母親であることを大事にすればするほど、それを受け入れてしまうように思います。

 そうやって、子育ての間は不満を感じながらでも何とかやっていけても、子供がいなくなって夫婦2人だけになると、こんなはずではなかった、と気がつく時がやってきて、その時に女性として生きることを選択すれば離婚になり、それでもやっぱり母親役を受け入れてしまうと、不満を残したままさらに結婚生活が続くことになるのではないかと思います。

 個人的な意見ですが、男性がパートナーを1人の女性として見られなくなったら、夫婦関係を円滑にすることは難しくなると思います。男性にとっては、安心と居心地のよさを確保できるかもしれませんが、女性にとっては決して幸せな生き方とは言えない気がします。こういう言い方をすると、男性側の問題のように受け止められるかもしれませんが、女性側が、子供を育てる以外で過剰に母親としての役割を期待されることをきっぱり断ることも必要だと思います。もちろん、夫に母親のように接する必要があるときもありますが、妻であることを置き去りにしてまで母親になろうとしなくても、夫にはちゃんと母親がいるわけですから。

 逆に、女性が男性に父親を求めるときにも、同じ事が言えると思います。

 結婚した時から、相手に親の役割を求めようとすると、はじめはうまくいっても必ずどこかで問題が出てくるように思います。子供を愛することと、夫婦が互いに愛し合うことが全く同じなら、家族である意味が薄れてしまいます。子供は子供、夫婦は夫婦、と割り切って考える外国人に比べると、日本人の家族観はどこかあいまいなのかもしれないし、それをよしとする文化があるのかもしれませんね。

 私の配偶者は最初から、私に母親を求めていたんだなあ、とようやく気がついたところです。何度失敗しても許してくれて、最後まで面倒見てくれると思いこんでいますから。最初から合わなかったのも仕方ありません。でも、結局それを受け入れてきてしまった私も良くなかったと思います。

 こういう視点で見ていくと、原家族で未解決の親子関係の問題が、結婚してからも再現されるという、斉藤先生の意見も何となく理解できる気がします。親子関係は親子関係の中で解決しておく必要があって、それを夫婦や子供との関係にすり替えて解決しようとしないほうがいい、ということなのでしょう。

 
 

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Comments

初めまして。
たんぽぽです。

今までロムばかりでしたが
初めて投稿させていただきます。

私も旦那と離婚したいと思っています。
旦那にも話しましたが今は、保留になっています。
子供は3人。
末っ子は、発達障害でとても大変です。旦那は,子育てには無関心で仕事人間です。
そんな不満が蓄積して今爆発寸前です。
しかも、息子の発達障害を受け入れようとしない
旦那に怒りさえ感じます。
なんとかして分かって貰いたいと言う感情は今は皆無です。
現在はそれを通り越して悔しさだけが残り今までの12年間を返して!と、訴えたい気持ちで一杯です。

今まで、旦那の思う通りに何でもして
子供や旦那に尽くしすぎていた私が一番
いけないんだと思いますが、それでも、
「そんなにしなくていいんだよ。」なんて一言もなく、私をこき使い、それが当たり前のように
された悔しさにやっと気づいた時
旦那を全く愛せなくなりました。

振り返ると惨めになるだけで悲しくなります。

旦那を愛せなくなった自分にさえ罪悪感を感じ、
どんどん自分を追い詰めています。

最近旦那に言われました。
「お前は自家発電しているんじゃないの?」
って・・・
今までのことを振り返りすぎて
どんどん不機嫌になっている私への感想です。

これから、どうしてよいのか
考えていますが、なかなかどうして良いのか
わからず、辛い毎日です。

Posted by: たんぽぽ | 2005.01.10 at 11:21 PM

またまた思い当たる節がてんこ盛りで・・・(^_^;

最初の夫は父親が強い人で、夫というものをほとんど
捨ててしまった人でした。
男でもそういうタイプはいるんですね。

2番目の夫は中間だったけど、やっぱり私に妻よりは
母親を求めていた感じです。
また私も父親を求めていたから、はっきり「俺はお前
の父親にはなれない」と言われましたねぇ。
今思えばいろいろと教えてもらったことも多いので
恨みも何もないのですが。近くにいればいるほど、
相手の心や、大事な事を見失ってしまいがちなのは
不思議な感じです。一人の人間としてつき合えば、
過剰な期待もしないしもっと心も広く構えることが
できたかもしれません。

「良いときもあったんだし」と別れを切り出した側が
言ってきたので、今思うと離れることもまた必要な時
もあるのだなぁ、と思えるようになりました。
「良かった頃の思い出」まで哀しくしてしまうのは
辛いことですもんね。

Posted by: 透雪(ゆきこ) | 2005.01.12 at 07:37 PM

こんばんは。トラバさせていただきました。

いつもためになるお話をありがとうございます。遅くなりましたが今年もよろしくお願いいたします。

Posted by: miyashu | 2005.01.18 at 09:13 PM

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