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ジレンマ(上)

 事後報告ですが、3日間お留守にしていました。
ぴょろが受験する中学校の説明会と私のお仕事もあって、沖縄に帰ってきました。

 やはり気温差10度以上というのは、体に堪えます。沖縄は日中は長袖でも汗ばむくらいの気温なのに、飛行機に乗って1時間半で福岡に戻ってきて、空港から外にでると寒い。これからの季節が最も気温差が大きいので、毎年体調管理には気を遣います。

 沖縄に発つ前に半日だけ、病院でカウンセリングの仕事に行きました。その日は、人数は4人と少なかったのですが、その中の1人に心理テストをやることになっていたので、その事で主治医と意見調整をしたり、時間の合間でテストの採点をしたりと結構忙しくしていました。

 ちょうどお昼の休憩時間、病院のスタッフと一緒に話していたら、私の担当しているRさんの話題になりました。

 Rさんは、うつ病の診断があり、認知療法とカウンセリングをしてほしいと、主治医から依頼された患者さんで、私がその病院に勤務し始めてすぐから、1年半ずっと面接を続けている人です。Rさんは、当時医師の薦めに従い、1年間の休職中でした。

 最初は、私も素直にうつ病として対応していたのですが、そのうち段々とこの方は多分ADHDか、あるいはアスペルガーとADHDの混合ではなかろうか、と思うようになりました。また本人も、もしかしたら、自分はADHDではないかと考えるようになり、本を買って読まれたりしていました。

 私はRさんから何度も、「自分はいったいどういう病気なのか?」と尋ねられたことがありますが、その都度うつ病であることと、休養が必要だという事を繰り返し伝えてきました。しかし、ほんとうにRさんが知りたかったのは、ADHDかどうかだと、私は気付いていたのですが、それを本人に告知することができませんでした。

 なぜなら、この点において、主治医と全く意見が合わなかったからです。

 主治医は、私がいくら説明してもADHDであるということを認めてはくれませんでした。主治医と意見が合わない限り、私は主治医の下した診断を超えることは立場上言えないので、主治医が本人に対して説明することを繰り返すしかなかったのです。診断を出せるのは、法的にも医師だけなので、私たちには医師の出した診断に準じて、自分の置かれた職域で患者さんに対応することしかできないのです。

 Rさんと合うたび、告知とその後のフォローの必要性を感じながらも、とうとう言わずじまいで、Rさんは職場に復帰していきました。復帰後1ヶ月の面接が、先週だったのです。Rさんは、大分疲れているようでした、うつは良くなっているのに、人間関係など肝心の問題はほとんど未解決のままなのです。

 Rさんは、私から見て、明らかに典型的なADHDの問題と、多少アスペルガーと共通する生きにくさを抱えているように思えました。そんなRさんが時々診察やカウンセリングの予約時間をすっぽかすことがあって、私はそれはADHDの人にはよくあることだから、とあまり気にしたことはありませんでした。

 しかし、スタッフは決してそうはとらえていないことを、思い知らされたのです。

 スタッフの1人が、Rさんの話題が出たときに、「あの人、ときどき診察に来ないし連絡もないときあるよね」と言ったら、別のスタッフが「でも、○○の時にはちゃんときていたし、自分が来たくないときはこないだけじゃない?」と返し、それに対して別の人も、「けっこうわがままなんじゃないの」。

 彼らの会話を黙って聞きながら、「そうじゃないんだけどなあ、本当にRさんは忘れてたんだよ」と言いたかったけど、言いませんでした。普通の人から見ると、多分ADHDの特性って、単なるわがままだとか、気まぐれだとか、誤解されやすいことは、自分自身の体験からも嫌と言うほど分かっていますから。

 それでもやっぱり、病院なんだから、もう少し発達障害の事も理解しておいてもらわないと、患者さんに不適切な対応で不愉快な思いをさせることになるんだよ、と内心かなりイラついていました。

 病院で大人の発達障害に対応していくには、私の中にまだまだジレンマがたくさんあります。


(続く)

 

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Comments

お久しぶりです。私もRさんと同じ(?)ように、よく物忘れをします。同じような人がいること、
また周囲の反応もよく似ているのでビックリしました。

私の場合、仕事に没頭していて約束を忘れることが多く、会社の近くの歯医者に通っていた時には、
何度もすっぽかしました。メモしたり、カレンダーに書いたりしても駄目な時は駄目です。
没頭しているときにはメモを見ることも忘れるのですから...手に書いても同じでした。
気づいたのが3日後だったりすると、断りの電話を入れていいかどうかも迷ってしまい、
結局行かなくなったり、予約するのも気が進まなくなってしまいます。

歯医者の場合はこちらが客なのでまだいいのですが、大切な人との約束を忘れて、関係が壊れたこともあります。
その時、どうして忘れるのか説明しましたが通じませんでした。向こうの言い分では
「自分は大切な用事なら忘れることはない。忘れるのは大切だと思っていないからだ。」となるようです。
決してそうではないのに...
結局その人には分かってもらえなかったことをこの記事を読んで思い出しました。

Posted by: ぴょろかる | 2004.11.30 at 05:22 PM

ぴょろかるさん、

 同じような体験をお持ちなのですね。
実は私にも、似たようなことが結構ありました。
人間関係は壊れなかったけれど、信用回復には時間がかかりました。メモしても忘れるということ自体、なかなか周囲の人には理解が難しいんでしょうね。

Posted by: Sana | 2004.12.01 at 11:24 PM

コメントありがとうございます!
記事の本題が「ジレンマ」だったのに、横道にそらしてすみませんでした。

Sana先生が悩んでおられるようなことがあることは、患者さんにとってとても不幸なことだと感じました。また、それだけに先生のジレンマも大きいのだと...最初はちょっと信じられなかったのですが、科学の先端にあるような医学界でも、中の人間関係は料理界さながらの徒弟制度であると言うような話しを聞いたことがあります。

しかし近代の歴史では、とても覆らないと思っているようなことがガラリと変わるような事件が起こったように、この世の中はいろいろなことが便利になるにつれ、「歪み」が少しずつ解消されていっているように思います。人間の持つマイナスの部分も、直視し受け入れることができるようになってきていると感じています。

気休めでしかないですが、Sana先生のように問題を捉える方がいる限り、いつかは「歪み」や「不理解」が解消されると信じたいです。

Posted by: ぴょろかる | 2004.12.04 at 01:29 PM

ぴょろかるさん、

そうですね、不理解の解消は、やはり専門職の人たちの意識を変えていくことから始まるのかもしれませんね。精神科は、小児科と視点が大分違うので、発達障害については結構意見が分かれてしまう現状があります。

私は看護系の大学や福祉系の専門学校で発達心理学を教えているので、まずは自分の職域から、少しずつ発達障害に対する適切な知識を持てるように、働きかけていこうと考えています。

Posted by: Sana | 2004.12.07 at 12:45 AM

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