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母親の涙

 本当は、別の記事を書こうとしていたのですが、カイパパさんの記事と、めめさんの記事を読んで、今日起きたことをどうしても書かなければという気持ちになりました。

 祝杯にはまだ早い:発達障害者支援法の出発点を確認する(カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクル)
 発達障害者支援法(きらきら ぐるぐる)
 
 今日私は、ある中学校の先生方と、その学校で問題のある生徒のことについて、コンサルテーションのためのミーティングを行いました。この中学校は、K市内では比較的まだ落ち着いている方の学校なのですが、発達障害の疑いがある子供たちが多いのです。特に気になる生徒については、担任の先生と個別に面接をするなどしてこれまで対応してきたのですが、今日のミーティングでは特に自閉症スペクトラム障害の話に集中しました。

 話し合いの中で相談の対象となった子供たちの半数以上が、学力の著しい遅れも伴っていて、その中でもうすぐ進路決定の時期を迎える3年生の生徒たちにとっては、厳しい選択を迫られることは想像に難しくありませんでした。中学校までのように、高等学校は発達障害に対して理解を示さないことが多いと、先生方も私も経験上承知していました。だからこそ、中学卒業後、彼らがどのように育っていくのか、それぞれの立場で心配がつきないのです。

 話し合いは、2時間半と、いつもの倍近い時間になりました。

 ミーティングが終わって、私が帰り支度をしようとしたら、参加していた先生の1人が、かなり思い詰めた顔で、「ちょっと個人的に相談したいことがあるんですけど」と近寄ってきました。

 他の先生方が部屋から出て行かれたあと、その先生は、やっとの事で重い口を開き、家族の事で話したい、と切り出しました。

 子供にどう接していいか分からないんです…と、後は堰を切ったように話し始めました。以前からどうしても子供とうまく行かず、これからどうしていいかずっと悩んでいて、ミーティングでの話を聞いていると、もしかしたら子供が自閉症スペクトラムに当てはまるのではないかと思う、という内容でした。

 子供の発達状況や「今困っていること」を伺った限りでは、アスペルガー症候群の可能性が高いように感じました。

 先生という職業柄、周囲のプレッシャーも子供に対する責任感も人一倍強かったのでしょう。話が、子供の将来のこと(進学や就職の問題)に及ぶと、こらえきれなくなった先生は、涙を流しながら、「子供がどんな職業につき、どんな人生を歩むのか、それを考えるのが辛い」とおっしゃっていました。

 私が目の前に見たものは、紛れもない、子供の将来を心底心配する母親の姿でした。

 理解しよう、歩み寄ろうとしている愛情豊かな両親にとって、どんなにがんばっても子供に思いがきちんと伝わらず、どうしても心の距離が縮まらないのは、とても苦しいことなんだと、改めて感じました。

 その時、私は一瞬、スクールカウンセラーの立場がふっとんでしまい、1人の発達障害を持つ子供の親として、安易な慰めの言葉をかけるより、今はただ相手の苦しい気持ちをそのまま受け止めてあげたいと思いました。

 私は、自閉症スペクトラムの告知を受けた時の、母親の涙を何度も見てきました。だけど今日もう一度、涙を流す母親の姿を見て、改めて決意したのです。

 彼女たちや私のような人たちを、これ以上ふやしてはいけない。

 親として、過度の自責感や必要以上の辛さを味わうことのないように、そして「この子を育ててきてよかった」と思えるように、そして、子供の将来にもっと具体的なビジョンや希望が持てるように、

 私はもっともっと勉強して、発達障害の専門家として、また当事者の親として、できるだけ彼女たちの力になりたい。

 そのためにも、最も基本的な枠組みである、発達障害者支援法が、出来る限り原案のまま採択され、実施され、もっと発達障害の当事者や家族への支援を適切で十分なものにしていく大きなきっかけになることを何よりも切実に願わずにはいられません。


 そして、このあとの記事でもう一つ、大事な事を書きたいと思います。

 

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Comments

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Tracked on 2007.10.15 at 02:18 AM

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