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自分の人生に責任を持つ

 昨日夜中から台風23号の影響で、大荒れの天気です。
お昼ごろよりは少しおさまっていますが、まだ風が強く、窓ががたがたと揺れています。

 このあたりの小・中学校は今日はお休みです。でも、市内バスが普通通り運行されているので、私は午前中中学校へスクールカウンセラーの仕事に行ってきました。子供たちのカウンセリングはありませんが、先生方との話し合いがあったからです。

 私の勤務する中学校は、K市内では比較的落ち着いていて、長期の不登校生徒数も少ない方だと聞いていました。確かに、他の中学校に勤務するスクールカウンセラーの話を聞く限りでは、表面的には問題が少ない方かなと思っていました。でも、次第に学校に慣れてきて、いろんな先生と話す機会が増えてくると、実は目に見える問題が少ないだけで、予備軍はけっこういることが分かってきました。私の目から見ると、軽度発達障害の子供たちが予想したよりも多く、また家庭に大きな問題を抱え、悩みながらもどうにか学校に出てきている子供たちも少なくないように思えます。

 一週間に8時間と、極めて限られた時間しか中学校にいないため、全ての子供たちの援助に直接関わることは不可能です。せめて、時々彼らに直接関わっている先生方から様子を聞き、どんな助けができるのか、どう関わってもらえればいいのかを、一緒に考えることくらいしかできないことも多いです。不思議とそういう話し合いを重ねるうちに、問題がこじれることなく本人も、そして関わっている先生方も何とか対応していき、そのうちに段々と問題そのものが解決方向に向かうことがあります。しかし、先生方も私も、子供たちがこの状況を乗り越えられるように、それぞれの立場で考えていても、子供たちに声がなかなか届かないこともあるし、先生と私で意見が合わないこともあり、うまくいくことばかりではなく、学校での援助に限界を感じることもあります。

 中学生は難しい、とよく言われるのですが、私は決してそう思いません。たしかに、身体は著しく成長し、内面の変化も大きい時期であることに疑いはありません。それでも、彼らの繊細さや洞察力の鋭さなどに驚かされますし、本当に人をよく見ているなあと感心させられることも多いです。そういう特性があるために、彼らが家族や友達など人との関係で傷ついたり悩んだりするのも無理のないことではないだろうか、と感じます。多くの子供たちは、苦しい時でも自分でどうにかしようともがいているように思います。そして彼らの多くはそれを言葉として伝えることができないので、行動で表すことで何らかのサインを出しているように思えるのです。そのサインには、援助を求めるという意味だけでなく、周囲に対する警告的な意味も含まれているように感じることが少なくありません。彼らの言いたいけど言えないことをキャッチするだけの感性を、果たして周囲の大人たちは備えているんだろうか?そんな疑問を抱くこともよくあります。

 今日、学校でふと窓の外を見ながら、どのような人にも、人生に何度か今日のような嵐の時が訪れるのではないか、と思いました。
 
 世の中には自分の力ではどうしようもない問題も、生きている限り避けられない問題も存在します。虐待、暴力、裏切り…たとえ犯罪と呼ばれる行為でなくても、毎日の生活の中で傷つくことはたくさんあります。どんなに親しい人がいても、孤独からは逃れられないし、死や病気がなくなることはありえない、そういう事に本格的に気付き始めるのが中学生の頃ではないだろうかと思います。「どう生きるか」という根本的な問いは、このあたりから始まっていそうな気がします。

 こんな風に考えていくと、人間はいくつになっても何らかの辛い体験や傷つきを抱えながら、生きていかなければならない定めなのかもしれない、と思います。トラウマを抱えた人たちを援助する仕事を何年もしているうちに、段々と問題そのものが解決することより、その人がどう向き合ってどう乗り越えていくかが大切だと考えるようになりました。過去はどうやっても消し去ることも変えることもできないし、記憶は残り続けます。もう同じような体験をしないという100%の保証はどこにもありません。過去からも不安からも、完全に逃れたいと望むことは現実的でないように思います。

 EMDRのようなトラウマに対する治療的な介入を行う中で、結局トラウマを乗り越えられるのは、「自分の人生に責任を持てるのは自分しかいない」ということに気付いた人たちではないかと感じます。過去を忘れようと、アルコールや薬物への依存を強める人もいるし、怒りを抑えきれずに他人に攻撃的になる人、過去を否定し問題から目をそらし続ける人もいます。その一方で、度重なる虐待や暴力に遭い、心も体も傷つきながらも、真正面から向き合い、受け入れ、そして自分自身と生活を立て直していくだけでなく、他人を援助している人もいます。自分を理解し、受け入れてくれる人の存在やいい治療者との出会いも大切ですが、結局生き方を変える一歩を踏み出せるかどうかは本人次第なのです。

 私自身も、自分の人生に責任を持てる人間になりたいと思っています。今はまだ、十分に回復したとはいえませんが、与えられている責任の範囲内で援助者としてできることを続けていきたい、そしていつか笑顔でまっすぐ前を向いて歩いていけるように、ここから一歩ずつ進んでいきたいです。

 中学生の子供たちにも、「たとえ周囲がどのような状況であっても、自分で考え、決めていかなければならないことがある。自分の考えにも行いにも、そして人生にも責任を持つことができる」と皆で伝えていく必要があるのではないかと思います。すぐには分かってもらえなくても、その答えは10年以上経って返ってくるかもしれませんから。 

 

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