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悲しみを力に(2)

 今日、これから大学で講義です。
今年度後期は4年生の選択科目で臨床心理学を教えています。

 今の時期、学生さんたちは、就職試験と看護師国家試験の準備で大忙しです。講義も、集中講義に近い過密スケジュールで、教える方だけでなく、講義を受ける方も大変な様子。

 いずれ看護師になる彼らに、臨床心理士を目指す人たちと同じような事を教える必要性を感じないので、かなり実務に関係のあるテーマを中心に教えています。その中には、ストレス管理とか、自己能力開発といった、応用分野も含まれています。選択科目なので、受講者は多くないですが、進路についてはかなりはっきりした目標を持っている人たちが多いです。そういう彼らのニーズに合わせられるかどうかが、私の力量の問われるところでしょう。

 やっぱり、教えること自体が大好きみたいです。

 前回、「悲しみを力に(1)」を書いたところ、peterさんからコメントをいただきました。

 「sanaさん、きっと、障碍を持ってらっしゃる方ひとりひとりに、親御さんひとりひとりに、それぞれに必要な援助は違うと思います。
それを見つけて共に歩んで行かれることは、きっととてもとても大変なことだと思います。」

今日はそれにお応えする形で続きを書きます。

 私は今、大学の付属病院を始め、複数の病院で非常勤として働いています。いずれも、複数の医師と、同じく非常勤の臨床心理士や社会福祉士などのスタッフを抱える、人的な資源には恵まれている場所です。

 基本的に、病院での心理士の関わりは、心理テストかカウンセリングのいずれかになっています。面接時間は60分が原則ですが、状況によっては90分の時もあります。

 その短い時間の中で、個別にカウンセリングをするか、あるいは何人かのグループで何かの話し合いや活動を行っています。

 大人でも子供でも、発達障害の場合や、家族の問題が本人に大きな影響を与えている場合、本人だけの援助ではうまく行かないことがでてきます。そういうときには、前述の通り、別の担当者が家族への面接を行うというのが基本です。あるいは同じ面接者が本人と家族と両方の面接を受け持つこともあります。面接は同じ日に行われることもあるし、日にちをずらすこともあります。

 どの方法をとっても、時間的に限られていますから、本人と家族と両方の必要を見つけ、支援するには当然ながら限界があり、そのためにジレンマを感じることもあります。発達障害の場合、個人個人のニーズの違いはありますが、生きにくさの改善や自立に向けた支援、という点では、ある程度の方向性があるので、援助の計画や予想は立てやすいです。

 しかし、本人の周囲にいる家族に目を向けると、家族の一人一人は、本人の障害から派生する問題だけではなく、日常では他の問題も抱えているし、発達障害のある人が家族の中にいる、という以外にも悩んだり考えなければならないことがたくさんあります。だから、家族のニーズに対応していくのは、大変な作業であるというのは本当だと思います。

 それでも、その「大変さ」を引き受ける決心をして、本人と保護者の両方への支援を続けています。

 それは、「自分にして欲しいと思うことを他人にもその通りにしなさい」という聖書の教えが土台になっています。私自身が、ぴょろのADHDについて、ずっと一人で悩んできて、本当はこうして欲しかったなあ、ということがたくさんあったので、そういった体験の中から学んできたことを、支援に生かしたいと思っているのです。

 ぴょろの問題行動をうまくコントロールできなかったこと、対人のトラブル、配偶者との関係、などなど、これまでにずいぶんと自分を責めてきたし、消えてしまいたいと思うこともありました。自分ががんばるしかない、と思いながらも、本当はどこかで「これでいいよ」と受け止めてもらえていたら…と何度も考えました。

 そういう体験から、どうしても、保護者の表情や態度の変化を見逃すことができなかったのです。

 たとえ、10分や15分の時間であっても、今日はこのまま帰ってもらっていいのだろうか、と感じるときは、家族と話をします。個人の連絡先は教えることができませんが、専用メールを利用し、メールでのやりとりを続けている人もいます。十分でなくても、せめて受け止められているという気持ちが少しでも持てるように、辛さを共有するために、出来ることをやっていこうと思っています。

 私は、ぴょろのこと、自分の生い立ちの事、配偶者の問題で、たくさん悲しい経験をしました。最初は何故、こんな問題を背負わなければならないのだろう、とどこにもぶつけようのない気持ちを抱え、途方に暮れたこともありました。

 でも、ある時、もしかしたらこの悲しみは、私の成長のためには必要なものだったのかもしれない、と思うようになりました。今までは、問題がなくなることを望んでいたけれど、そうではなく、そこからどう生きるかが試されていると感じたのです。

 そういう体験をした人間だからこそ、できる援助がある、それが、「大変さ」を引き受けようと決心するきっかけになりました。ぴょろも実家も配偶者も、すぐに解決できるような問題は一つもありません。今でも時々悲しくなることも、自分を責めたくなることもあります。そんな私を全部受け入れた上で、あえて大変な道を選ぼうと思ったのです。

 私の教え子の一人が言ってくれた言葉があります。

 「耐えるだけでは何も解決にならない。何かしないとそのままで終わってしまう。もっと勇気出して行動すれば何かを失うかもしれないけど、それは自分のために必要なこと、と思えばいい。」

 私は、何か大きな事をやろうと思っているわけではありません。私が心がけているのは、

 「できることをやる」
 「今すべきことを引き延ばさない」

 の2つだけです。自分の力の限界、立場の制約、問題の複雑さ、いろんなものを受け止めながら、これからもこつこつとやっていこう、と思っています。もちろん、他のスタッフとうまく連携を取りながら、一人で抱え込まないようにして、本人と家族以外の応援団を増やしていくことも、頭に置きながら、です。

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Comments

恥ずかしながら、私、「自分にして欲しいと思うことを他人にもその通りにしなさい。」子供が生まれ、情報が氾濫しているこの世界で、これだけは心に刻んでいて欲しいと願い、ずっと伝えてきた言葉です。

sanaさんのメッセージが本当に心に響いています。
大変なことがわかっているのに、それでも「頑張って欲しい」と書くことができませんでした。
それは、やっとの思いでこどものことを打ち明けた時、「みんな抱えている問題は違う。言わないだけで頑張ってる。」と励ましてくれた言葉に私がずっと縛られているからかもしれません。

どうか、謝らせて下さい。
言葉が少なく、sanaさんに本当に失礼なことを書いてしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。

とてもお忙しいと思います。
どうかお体に気をつけられて下さい。

またお邪魔させていただいてよろしいでしょうか。

Posted by: peter | 2004.09.17 at 12:59 PM

強くなければ生きていけない
でも、
優しくなければ生きる資格がない

どなたか外国の方のお言葉でしたでしょうか、ふとこの言葉が頭に浮かびました。

sanaさんは優しすぎるように思っておりましたが、
それは、自分の悲しみを乗り越えて、強さを手に入れられたからなのですね。

図太いだけの強さは捨てて、sanaさんのような透き通った強さが欲しいです。
そのためには、いろんな事から逃げず、投げ出さず、乗り越えていかなければなりませんね。
今まで逃げてばかりでした。
sanaさんの言葉のおかげで、少し勇気が湧いてきました。

今できることを先に延ばさない。
実践するのはとても難しいですねっ。sanaさんはすごいなぁ。。。
しかし、あまりにも自分を犠牲にして周囲の人の為だけに頑張りすぎないでくださいねっまずは自分が健康で幸せでないとですよ~☆

Posted by: ちょこりん | 2004.09.17 at 04:17 PM

sanaさん、こんばんは。
いつも訪れては、勇気をもらって・・・
そしてなにもコメント残さず去っておりましたが
今日は、今の私の心にすごく響く(効く?)言葉達が散りばめられて
おりましたので感謝の気持ちを伝えたくて、コメントしてます。


「耐えるだけでは何も解決にならない。何かしないとそのままで終わってしまう。もっと勇気出して行動すれば何かを失うかもしれないけど、それは自分のために必要なこと、と思えばいい。」

特にこの言葉にすごく励まされましたよ。
ほんとにそうだと思う。
これから、また・・・勇気を出して歩き出せそうです。
自分を信じて! !


Posted by: かずみ | 2004.09.17 at 10:13 PM

「今すべきことを引き延ばさない」・・・ものすごく耳が
痛いです。私のは「今やらなくてもいいことはやらない」
なので(苦笑)。そうしないと、ぴいんと張りすぎて壊れて
しまったんですもの。少しだけお節介な気持ちから、心配
しちゃいます。

Posted by: 透雪(ゆきこ) | 2004.09.21 at 06:33 PM

>Peterさん

 失礼なこと、とは思っていないです。
率直な気持ちを伝えて下さってありがとうございます。
これからいつでもお越し下さい。

>ちょこりんさん、

 頑張りすぎないように、が今の私の課題でしょうね。
ご心配ありがとうございます。

>かずみさん、

 いつもブログを拝見させて頂いています。
いろんなことがあっても、前向きにがんばっていらっしゃるかずみさんの言葉に、私も励まされています。
 
 お互いに、希望を持ってがんばりましょう。

>透雪(ゆきこ)さん、

 今やらなくていいことは私も後回しにしていますよ(笑)
でも、後回しにして「しまった…」とあとから後悔しそうなことは、やるようにしています。

 いつも張りつめた状態にならないように、息抜きも大切にしたいですね。

Posted by: Sana | 2004.09.22 at 09:13 PM

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