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親の悩み、パートナーの悩み

 昨日1日、臨床心理士会主催の研修会に参加しました。
途中から、座っているのが段々きつくなってきました。背中が痛いなあ、と手のツボを押しながら最後まで話を聞き、それからアパートへ戻ってきたら、それまでの疲れが一度にどっとでて、TVを見ながらいつの間にか寝てしまいました。

 不安が強いとき、私はよく入道雲の夢を見ます。いつも飛行機に乗って見ているからなのか、かなりリアルです。

 空を見ていると、入道雲がもくもくと大きくなってこちらに迫ってくる。そのうち、灰色の雨雲にかわり、どんどん空に広がっていく。夢の中の私は、なぜか小学校2年生くらいの子供で、バス停でバスを待っていると、段々と雲が空を覆い、雨が降ってくる。雷が落ちてこないかとはらはらしながら、身を低くしてバス停にじっとしている、そんな夢でした。

 目が覚めたとき、一瞬だけど恐ろしいほどの孤独感が襲ってきます。人とのつながりが全くなくなってしまったような、全く誰からも切り離されてひとりきりになってしまったような、そんな感じです。

 こんな時に、すぐに話せる人が思いつかない、それが私にとって一番辛いことです。


 師匠との出会いから、必然的にPTSD(心的外傷後ストレス障害)の心理療法に関わるようになってはや3年、いろんな人との出会いがありました。子供の頃の虐待、DV,突然の死別、刑事事件の被害者、と抱える問題は様々でした。その中に、自閉症スペクトラム障害も抱える人たちが含まれていた、そのことがきっかけで、大人の発達障害への支援にも、PTSDの治療と平行して関わるようになりました。

 大人でも子供でも、発達障害の可能性が明らかなときは、私は親に告知をします。主治医がいる場合は、主治医と話し合いの上、主治医から伝えてもらうこともあります。

 言いっぱなしではなく、その後、長期的な家族へのサポートが始まります。

 私の、仕事から得た経験と、ブログで出会った皆さんの記事と、そしてADHDの子供とアスペルガー症候群の配偶者を持つ家族としての経験から、発達障害の本人も困っているけど、家族はもっと困っている、と実感しています。誰かが家族を支えていかないと、家族がうまく機能しない、そう思うからこそ、いろんなブログを訪問し、あるいは実際にご家族と会って話を聞き、どんな事に悩んでいるのか、どういう助けを必要としているのか、ずっと考えてきました。

 本当は、同じ助けは私も必要としている、だけど援助者としてそれはとてもいいにくいです。カウンセラーはそういう意味では因果なお仕事なのでしょうね。

 親としては、子供とどう関わっていいのか毎日迷い、悩み、試行錯誤の日々。このくらいできるだろう、という期待はあっさり裏切られる。かと思うと、思うよりあっさり出来たりする。注意集中力は日によってムラがあるし、予測が難しい。あまり気にしていないように見えて、傷つきやすい部分がある。どう叱り、いつ教えたらいい?その結果はどうなるのか?相手の態度は状況次第なので、先が見えない。だから、小さなことでも、何かを始めるときは、いろんな事を考えてしまう…。子供が次第に成長してくると、友達、先生、周りの人との関係について、親としての心配は増えていく。子供の特性を説明しても、分かってくれる人そうでない人、興味を持つ人持たない人、それぞれに反応が違う。いじめのこと、学力のこと、受験のこと…と、考えることは後からどんどんやってくる。思春期の大きな変化も、発達障害のある人には少ししんどいことも多い。進路のこと、自立のためのスキルを今からどう教えるか、目の前の事だけでなく、10年先まで常に考えながら、子供に対応していかなければならない。

 子供を一人育てるだけでも、考えることもやるべき事もいろいろあります。他人の理解や協力なしで、とても親だけでできることではありません。

 その上に、配偶者にも発達障害がある…。2人の子供を一人で育てるのと状況的には似ているかもしれません。

 興味の範囲が狭い配偶者は、決断が苦手です。大事な決断の時には話し合いができないので、結局いつも一人で考えてきめることになります。しかし、意見や気分がころころと変わる配偶者は、いつも直前になって攪乱するため、最後の最後までもめてしまう。あるいは、決めてしまった後で、「自分は本当はこう思ってた」と言い出す。

 共感が難しく、不器用な配偶者には、何度言っても私の声は届かない。

 子供を育て、配偶者とうまくやっていくには、私にはどうしても専門家としての知識が必要でした。今まで膨大な量の専門書と文献を読み、専門家の講義や助言を受け、どうすれば、という私自身の疑問にできるだけ答えを探してきました。

 知識だけでなく、人並み以上のキャパ(包容力)も求められます。配偶者の失言や、他人を視野に入れない、衝動的な行動にも、寛容な対応をしていかなければならない。子供の問題行動にも、冷静に対応していかなければならないから…。

 だけど、私はマリア様のようには、何でも許し包んではあげられません。

 子供のことだけ、配偶者のことだけにかまっていられるわけではありません。仕事でも、いろんな問題や悩みが起きるし、実家のこともある。大学院生として、まだ研究を続け、論文を書いて実績をつまなければならない。

 子供のことで落ち込んで、配偶者の態度に腹が立って、泣いて泣いて、そんな夜を過ごしても、朝になるとまた、1日が始まる。仕事の時には、患者さんやクライエントの事に集中しなければならないし、大学に行けば、研究に集中しないといけない。単身赴任を始めてから、助けたくてもすぐには帰れないジレンマも。落ち込んで死にたくなっても、それでも講義が始まれば、一生懸命学生さん相手にしゃべりまくっている自分がいる。


 彼らは変われない、だから私が歩み寄るしかない、そのことは十分承知しています。多くを望んでいる訳でもないし、少なくとも彼らは、いろいろ壁にぶつかりながらも、マイペースで笑顔で暮らしています。

 その後ろに、彼らを支えて励まして、自分の力以上に受け入れようとしてきた私がいることを、彼らは分かっているのかは分かりません。

 ただ、私は誰でもいいから、「よくがんばったよね。」と言って欲しい。そんなワガママなことを考えてしまいます。

 
 

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Comments

わがままではありませんよ。
一生懸命している姿をありのままみてもらえるだけでも気は楽になるものなのです。
自分の感情をありのままかいてくださるだけでも発達障害をかかえている私はうれしいです。
うれしいときはうれしい!悲しいときはかなしい(T_T)
怒ってるときは怒る

Posted by: みっちゃん | 2004.08.24 at 02:10 AM

すみませーん。コメントを不足してしまいました。
自分の感情をストレートに表現できたいです。

Posted by: みっちゃん | 2004.08.24 at 02:12 AM

家族はもっと困っている、という部分には、激しく!同意します。
どちらが歩み寄るか...これは大問題ですね。障害の種類、程度、健常者側の人格というか、性格、というかなんというか、むずかしい...。お互いが歩み寄ること、が理想かな? お互いが歩み寄ることもあまりなく、それでいて憎しみやストレスを排除できて、家庭として成り立っているおうちも、もしかしたらあるかもしれないし。歩み寄ることが容易なおうち、困難なおうち、様々ありそうです。

Sanaさんがんばりすぎ、ですよ。ほんとは、家族からの報酬がほしいですよね。私は、旦那からの報酬が欲しいと思います。お給料とかいう意味ではなくて。それこそ、報酬=信頼、かしら? 間違ってるかなぁ。お仕事と家庭、エンジン全開で突っ走ってる様子が、文章から伝わってきます。頭の下がる思いです。

こちらのブログ、まだ全部は読んでいないのですが、昨日、リンクを貼る場合は一報を、という記事を読みました。遅れて申し訳ないんですが、リンク貼りましたこと、お知らせ致します。不都合があれば外します。

Posted by: sleapydeen | 2004.08.24 at 01:59 PM

書くのを忘れた。
発達障害者の苦しみって言うのは、物事を器用に出来ないことによるものなのです。
特に、アスペはさらに屈辱感にさいなまれるだけでくるしいのです。たとえ薬飲んだかとしても、就職できたからといっても、拭えないと苦しみが消えないでいるのです。
発達障害の治療はそれが抜けているのです。

Posted by: みっちゃん | 2004.08.25 at 04:35 PM

みっちゃん、

 コメントありがとうございます。
思うようにできない苦しさがあるんですね。

Sleapydeenさん、

 発達障害の相手にどこまで歩み寄れるか、確かに難しい問題ですね。答えがあってないようなものだから…。

 リンクありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

Posted by: Sana | 2004.08.26 at 06:02 AM

Sanaさん、つらい状況にいるのですね。

私は周りのお母さん(子供が健常であるないにかかわらず)に意識して言っている言葉があります。

「上手に育てたね」

こう言うと例外なくお母さんは本当にうれしそうな顔をし、中には「そんなこと言ってもらったの、はじめて」と涙ぐむ人もいます。これは実は私が人から言ってもらいたい言葉なんです。

人間はやっぱりそれなりの「ご褒美」がほしい。がんばっている自分にご褒美がほしいのはわがままでもなんでもないです。

Sanaさんはすっごくがんばっていますよ。その上私のブログまで来てとてもやさしいコメントを置いていってくれる。人の気持ちに沿うことができる人は、自分が一番それを欲しているんでしょうね。

Posted by: めめ | 2004.08.27 at 11:07 AM

めめさん、

 そうですね。「ああ、これって、自分に言われたい言葉かも」、と思うことは、仕事中にときどきあるんですよ。だけど、相手がその言葉や励ましを必要としていることが伝わってくるからこそ言っているのであって、自分のためではないですけどね。

 ご褒美欲しいと思うことも自然なのかな?

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