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もらい泣き

 先週の金曜日、私はある小学校へ、子供の面接に行きました。
PTSDかどうかを診断するための特別な面接です。

 この日は、空き教室を借りて面接することになりました。 
先生に連れられて入ってきたのは12歳の児童でした。

 その子は去年、一番の親友を交通事故で亡くしていました。そして、その命日があと1週間後に迫っていて、最近になって急に体調が悪くなったことを事前に知らされていました。

 面接が始まって、最初は好きなスポーツや習い事の話をして少し落ち着いたところで、事故の事について尋ねてみました。その子は顔色も変えず淡々と自分が(事故の時に)何をしていて、誰から友だちが亡くなったことを聞いたのかと話してくれました。

 辛いことを聞くかもしれないけど、と前置きをした上で、”(友だちが)亡くなったことを知ったときどんな気持ちだった?”と聞きました。

 これは、PTSDの医学的な診断のために決められた質問項目というのがあって、質問者は一応尋ねなければならないことなのです。

 その瞬間、その子は下を向き、大粒の涙をぽろぽろと流しました。

 ”そうか、辛いよね”と言った私も、思わず泣いてしまいました。どうして泣いてしまったのか、考えてみても分からないのですが、その子の泣く姿が痛々しくてそばにいる私も辛かった。

 面接は、いつもよりはゆっくり時間をかけて行いました。時々ペットのこと、好きな本のことなど気持ちを少し和らげるような話を交えながら、約1時間近くかかりました。

 面接の途中で、その子が”死んだら友だちにあえるかな、と思うときがあるよ”とぽつりと言いました。忘れてはいけないと思うけれど、思い出すと苦しくて仕方がないというのです。だけど、人前では絶対に泣けないからずっとひとりでがまんしていたよ、と泣きながら話してくれました。

 ひととおり面接が終わった後、私はこの子をこのまま家に帰すのはよくない、と思いました。それで、その児童に、簡単なリラクセーションをやってもらったあと、「○○ちゃん(亡くなった友だち)は今のあなたにどうなってほしいのかな?」と聞いてみました。

 その子は泣き顔のまま、「もっと強くなってほしいと思っているかなあ」とぽつり。

 きっと、天国から笑顔でがんばれって応援してくれてるんじゃないかな、自分の分まで生きてほしいと願っていると思うよ、と私が言うと、ゆっくりうなずきました。

 「私もお父さんが死んで悲しかったけど、今は空を見るといつも笑顔のお父さんを思い出すよ。いつかあなたにもそういう日がくるといいね」

 そう言いながら私は泣きそうでした。その子は少し気持ちを落ち着けたあと、教室を出て先生に見送られて家へと帰って行きました。

 空港に向かう電車の中で、私はずっとその児童のことが頭から離れませんでした。死にたい気持ちがそんなわずかの時間でなくなるわけはないのかもしれませんが、少しでも私の言いたかったことが伝わっただろうか…何かもっとその子にしてあげられることはなかったのだろうか、とぐるぐると考えていました。

 何故泣いてしまったのか、今気付いたのは、私の父の命日もまた近づいているということ。私とその子の経験が重なってしまったのかもしれません。(質問者が泣いてしまったのが、はたして良かったかどうかは別として)

 身近な人の死が、子供にとってもどんなに辛いものなのか、しかもそれを表現できる手段が十分に備わっていないだけに傷は思ったより深いことを思い知らされました。結局その児童はPTSDと診断され、医療機関へ紹介することになりました。


 こういう事もふまえながら、もう少し落ち着いたところで、佐世保の事件について書いてみようかと思います。

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Comments

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