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身体は覚えている

 おとといK市にいったばかりで、昨日また自宅へとんぼ返りしました。
昨日は夕方まで仕事があって、予定の時間までに空港に着くことができず、結局予約をキャンセルし、全日空の最終便に乗りました。

 最終便は、737-500(スーパードルフィン)という小さい飛行機です。週末ということもあって、ほぼ満席でした。昨日は比較的天候は良かったはずでしたが、目的地が近くなってから急に揺れがひどくなり、空港に着く直前には大きく横に揺れ始めました。

 ぎゃー!

…と言いそうでしたが、言わないうちに飛行機は無事着陸しとりあえずほっと一息。

 以前は、ここまで揺れるとまちがいなくパニックを起こし顔面蒼白になっていましたが、昨日は揺れた割には落ち着いていた気がします。

 ここまで来るのに、なんと1年4ヶ月かかりました…。

 去年の2月、私は大学院の試験を受けるために、この737-500(スーパードルフィン)に乗っていました。離陸後5分くらい経ってから、突然激しく上下左右に揺れ始めました。その日、発達した低気圧がこの地方に近づいていて、その影響で気流がかなり悪かったようでした。

 横にがしがしと揺さぶられるような揺れが、しばらく続きました。ところが、機内はしーんとしていて、アナウンスも何もないので、この飛行機ほんとに大丈夫なんだろうか、と急に不安になってきました。

 そこに、いきなりまた激しい揺れが。その瞬間私はパニック状態になって、「ぎゃー!」と叫んでしまい何が何だか分からなくなりました。

 その時に、横に座っていたおばあさんが、”雲の中を通っているだけだから、大丈夫よ。”と言いつつ、私の手をしばらく握っていてくれたので、私もやっと我に返り、その後もしばらく揺れが続いたものの、どうにか気持ちを持ち直して無事に目的地へ着いたのでした。

 飛行機に乗っている間、心臓がばくばくといつもよりは激しく動き、喉が渇き、身体が固くなっているような気がしましたが、それも飛行機を降りてしまうといつの間にかもとに戻っていました。

 ところが、この一件があってからというもの、飛行機に乗る前から緊張するようになり、飛行機に乗っている間に大きく揺れると、同じようにパニックを起こすようになってしまったのです。

 それまでは、飛行機の中では本を読んだりゲームをしたり時間を有効に使っていましたが、あまりの緊張のために本を開いても全然読むことができず、ゲームにも集中できず、約1時間30分の間、まんじりともせずに、こわばった顔で黙って座るしかできなくなりました。(私の表情をみて、気分が悪いのかと何度もフライトアテンダントのお姉さんに声をかけられました。)

 4月以降、大学院と研究会と最低2往復は飛行機を利用しなければならず、どうしよう、と思いました。しかもそれ以外に夏から秋にかけては学会に参加するために、東京や大阪、名古屋などへ行かなければならなくなり、飛行機を利用する回数はどうしても増えます。飛行機に乗るたびにこうだと、私の寿命は確実に縮まる…何とかしなければと、私の師匠(スーパーバイザー)へ、相談してみました。

 師匠は、「慣れるしかないねえ」、とそっけない返事。しかし、確かにその通りでした。

 まず、EMDRで最初の記憶を思い出しての恐怖感を減らしました。しかし、過去は過去になったものの、相変わらず飛行機に乗る前(特にロビーで搭乗を待っている間)に「今日もまた揺れないか」と考えてしまい、緊張がすごいので(注:これを専門用語で予期不安と言います)、その緊張をほぐすために、
 


 1)ぎりぎりまでロビーに入らない
 2)深呼吸など気持ちが落ち着きそうな事をやってみる
 3)揺れても大丈夫と自分に言い聞かせる

…といろいろやってみました。飛行機に乗っている間はどうしようもないので、できるだけ窓際の席をとるようにして音楽を聴き、外をながめながら気をまぎらわすようにしてみました。

 その間に夏が来て秋冬…と季節が過ぎていきました。天気や体調が悪いときはキャンセルも多少しましたが、怖がりながらもどうにか通い続けました。乗る回数が増えると、気流が安定している時には普通に過ごせるようになりました。

 ただし、大きく揺れると、ぎゃー!と叫ぶのはあんまり変わりませんでした。そのために、隣の席の人には結構迷惑をかけただろうと思います。(親切に大丈夫よ、と話しかけてくれる人もいたけど、嫌な顔もされた)

 頭では大丈夫、と分かっていても、揺れると勝手に身体が反応し、心臓がどきどきして息苦しくなり、何も集中できなくなるのはなかなかよくなりませんでした。「身体の記憶」は一度インプットされると消すのがなかなか難しいものです。

 そうやっているうちに今年の4月から単身赴任となり、毎週のように行き来するようになり、今までのように自分の都合ばかりに合わせることができなくなりました。

 当然少々体調が悪くても、仕事があれば行かなければならず、天気が悪くてもこの日でないと帰れないので飛行機に乗らざるを得ない、またまた不安は高まりました。

 だけど、「ええい、もういいわ!」と半ばやけくそで乗り続けていたら、段々と身体の方も慣れてきたのか少しの揺れくらいではどきどきしなくなったのでした。昨日はあんなに揺れたのに、新聞や本を読む余裕すらありました。

 あ~、やっとここまでよくなったのか、とちょっと感激しました。

 飛行機の揺れ→身体の反応→恐怖感→パニック という半ば自動的といえる流れを止めるには、まず恐怖感をどうにかすることが先決です。揺れて身体が勝手に緊張しても、大脳皮質の司令塔が「対処可能」と判断できればいいわけで、実際に恐怖感の切り離しには約1年がかかりました。

 身体の記憶に対しては、少々の揺れで身体が敏感に反応しないように、身体が揺れに慣れるために身体に直接働きかけるリラクセーション法を使うのが効果的です。私は「心臓コヒーレンシー」という呼吸法を揺れてる最中につかい、普段は自律訓練法を利用しました。

 時間はかかりましたが、階段を上るようにちょっとずつ良くなっていった気がします。

 心理療法の中には「認知行動療法」というのがありますが、まさにこれがそうです。同じようなことを、私はパニック障害の患者さんにもやってもらっています。

 身体はある状況でこう反応するんだ、としっかり覚えています。それを変えていくにはやはりちょっとづつ慣れるしかないんでしょうね。薬は不安や緊張は抑えますが、最後はやはり「自分次第」のようです。

 


 

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Comments

すっごい分かりますー。きっと飛行機での恐怖体験をした人にしか分かってもらえないことですよねっ 予期不安をかかえるようになってもニュースでは事故がおこらないかぎり世間には出回らない情報ですもんねっ
わたしも何度も大きな落下ともいえる揺れに会い それ以来この方のように本を買ってても全然読めないし固まって揺れを感じ続けるしかできなくなってしまいました。航空会社の方も気流の乱れによる揺れは、どうしようもないのかもしれないですけど せめて明るい音楽やテレビを流すとか
アナウンスは頻繁にかけるとかぐらい きちんとやってほしいですよねっ 
揺れまくっててお客さんは大変なことになってるのに何のフォローもない航空会社の飛行機にはいくら安くても質の悪さというか教育に問題があるとも感じられる瞬間ではないでしょうか。
「楽しい空の旅を」なんて うちだしてる会社も多いですけど実際のところ 恐怖体験 乱気流ツアーへようこそってかんじですよねっ 笑
今日も飛行機に乗ります。仕事上 夜のフライトが多いので不安感も増しますし 今夜も飛行機嫌い度が増すことでしょう・・。
揺れないことを祈りつつ一日をすごします

Posted by: 飛行機恐いsan | 2004.08.20 at 09:52 AM

はじめまして。
飛行機にのる大変さを分かって下さるのは、大変うれしいです。
大分前に書いた記事なので、久しぶりに読んでみて、今もそんなに状況が変わっていないなあ、と振り返ることもできました。(最近、台風の影響でかなり揺れた日があって、やっぱり怖かった…)

お互い、寿命を縮めない程度に不安に耐え、揺れる飛行機に乗ってこわいのは当たり前と開き直りつつ、無事に生きていきましょうね!(笑)。

Posted by: Sana | 2004.08.21 at 12:33 PM

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Tracked on 2007.04.10 at 11:44 AM

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