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一度この目で見てしまった人は…

 今年、恩師からの紹介で、ある大学の看護学部で授業を受け持つことになりました。(これが単身赴任の理由の一つです)

 後期の授業で、看護士のタマゴさんたちに心理学を教えます。授業の中で、私は大人の自閉症スペクトラム障害と性的虐待の2つの問題を1コマ使って取り上げることに決めています。

 どちらも、私がこれまでに取り組んできたテーマです。

 自閉症については、これまでもこのブログでちょっとづつ取り上げてきた通りです。大学院(修士)を卒業する時点では、軽度発達障害の子供たちへの援助者を目指していたわけですし、今はちょっとその路線からはずれているものの、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と自閉症の両方を持つ方の援助に関わっていますし…。

 性的虐待については、私の中でいまいち整理がつかず、今までここで取り上げたことがありません。しかし、最近になって、何か心の中にふつふつと湧いてくるものを押さえきれず、とにかく私にできることをやらなくては、という心境になっているのです。

 現在、私が数カ所の病院・研究所でお会いしている方の中で、半分以上はレイプなどの性被害、あるいは子供の頃に虐待を受けた女性です。

 その中で、性的虐待を受けたという話を切り出した人は、今のところそれほど多くはありません。病院の場合は、精神科医からのオーダーでカウンセリングを行います。大抵はパニック障害などの症状を軽くする目的での援助を請け負うため、虐待の事が語られるのが大分治療が進んでから、ということも珍しくないからです。

 しかし、性的虐待の事実を明らかにしたほとんど全ての患者さんは、心身共に重度の症状を抱えていて、薬を使ってもなかなか回復が遅く、慢性的な不眠などの極度の過覚醒症状に悩まされています。大半は頭痛や腹痛などの原因がよく分からない体の症状も抱えています。

 そして、ほぼ100%の患者さんが、それらの症状を少しでも楽にするために、薬以外に過食や多量の飲酒など、何らかの方法に頼っているのです。

 結婚して子育て中の方もいます。彼女たちの体験は、配偶者との関係にも子供との関係にも、様々な影響を与えています。ほとんどの方は感情の波が激しく、コントロールが難しいために、安定した関係を維持できないでいるからです。

 性的虐待は他の虐待よりさらに公になりにくいです。加害者は近親者、特に父親や兄弟が多く、自我のまだ十分に発達していない時期(5,6歳、極端な例は1,2歳)から数年~十数年と長期にわたり起こったケースが少なくありません。他に妹や姉がいても、本人だけが性の対象になることも多く、本人が声をあげないかぎり家族は虐待の事実を知らないままであることがほとんどです。

 性的虐待に加え、身体的な虐待を受けた方もいますが、そうでない場合、加害者が性的関係を強要する以外では子供と普通に遊んでいたりするため、周囲には子供をかわいがる親(または兄弟)という受け止め方をされてしまい、被害を受けている子供が、他の兄弟や場合によっては母親から嫉妬されることもあるようです。

 このような複雑さから、被害はたいてい未発見のままとなり、被害を受けた子供は虐待が止んだ後も様々な問題を抱えることになります。多くの被害者は、かなり早い時期に家を出て独立し、早くに結婚しています。虐待の事実は大人になってから、ごく親しい人に打ち明けられることが多いです。しかし、打ち明けた事で理解し、受け止められたという体験を持つ人はかなり少ないです。

 性的虐待を受けた人は、根強い罪悪感や自責感を持っています。彼女たちにとって、誰かに自分の経験を話すことは、さらに自責の念を強めてしまうことにもなるのです。話すことそのものが、大きなストレスになりかねないのです。
外傷体験がもたらす影響はまさにdevastative(破壊的)です。人の基本的な信頼感を、そして人格の大切な部分をこわしてしまいます。

 法的には、性的虐待の事実が明らかになっても、加害者との接触を制限するだけの強制力がまだありません。父親や兄弟が加害者の場合、大人になっても本人が自ら接触を断たない限りは、付き合いが続くことがほとんどで、家族に理解がないと、守るものが何もないのです。

 私がこれまでに、直接被害を受けた方とお会いしてきて、その深刻さに圧倒されそうになったこともありました。彼女たちの生活が少しでも安定するために、私は何ができるのか、何をすればいいのか、何年も考えてきました。その答えの全てが見つかったわけではなく、これからも多分悩み続けるのかもしれませんが、それでも「一度問題をこの目で見てしまった人は、何か行動を起こす義務がある」という言葉に背中を押されるように、学会で発表し、授業で教え、そして毎日現場で格闘し続けているような気がします。

タイトルの原文は、

"It's easier to be ignorant and say I don't know about the problem. But once you know, once you've seen it in their eyes, then you have a responsibility to do something." (無視することも、その問題を知らないということも簡単なことです。しかし一度問題をこの目で見てしまったら、それに対して何か行動を起こす義務があるのです。)

 クレイク・キールバーガーの言葉です。

 原文はこの本を参照下さい。

 ”だから、あなたも負けないで” シンシア・カーシー/リチャード・H/モリタ イーハトーヴフロンティア

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